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そもそも宿力って何?
宿力とは?
「宿力」とは、基礎体力作りと同じこと、と言えます。
フルマラソンを日頃の鍛錬なく走り切ることができないように、プロ野球選手が日頃のトレーニングなくして活躍することができないのと同じであると言えます。
「一時的な集客」は小手先のテクニックを使えば可能ですが、継続的な発展は見込めません。
「テクニックで買わされた」と思うお客さまが2度と利用したいとは思わないからです。
ベースの部分である、ビジョン=コンセプトに焦点を当てて屋台骨となる部分をしっかりと鍛える、この屋台骨の部分が「宿力」となりますし、一朝一夕で積み上がるものではありません。
また、景気が良ければそれに越したことはないかと思いますし、ハード(施設設備)が新しくて良ければそれに越したことはないかとは思いますが、もしも少しでも問題や課題を抱えているのなら、原因は「外(外的要因)」にあるのではなく、「内(内的要因)」にあります。
例えば、プロ野球選手が「私が上手くならないのはコーチのせいだ」と言ったとしても、誰も取り合ってはくれませんよね?
原因はその選手のトレーニングの仕方であったりするわけですから。
戦略:戦術=2:1
「戦略」:「戦術」=2:1である、と言われています。
ここで言う、
「戦略」とは、勝つための総合的・長期的な方向性のことで、土台となるべき宿泊施設のあり方・コンセプトのことと定義します。
「戦術」とは、目的を達成するための具体的な方法や手段のことで、お客さまの支持を得るための方法のことと定義します。
これは、「戦略が間違っていたら戦術では修正できない」ということになります。
花に例えるとしたら、当たり前ですが「蒔いた種類の花しか咲かない」わけです。
もしも、現状があなたの考えている状態と乖離しているのなら「蒔いた種が違う」のか「蒔き方が違う」のです。
(たまに、何も蒔いていない・・・と言う場合があったりもします。)
つまり、根っこの部分が違っている、ということとなります。
つまり・・・
あなたの宿泊施設の強みや弱みを把握し、理解して、必要なことをテストして検証して実行して、道理に適ったこと(効果的な戦略と戦術)を目的に向かって継続して行っていけば、時間の経過とともに(閾値を超えた段階で)良い結果(欲しい結果)が必然的に現れる。
ということとなるわけです。
20:80の法則
20:80の法則(パレートの法則)というものがあります。
よく、20%の顧客が80%の売上を作り出す、などと言われているものです。
これを、あなたの宿泊施設のある地域の宿泊業に落とし込んでみるとどうなるのか?ということなのですが、次のようになります。
ここでは、わかりやすくするために、単純にある地域の宿泊施設が100軒、その地域の市場規模が100万円と仮定します。
パレートの法則に当てはめていくと・・・
①上位20軒が
②市場規模の80%=80万円を確保し
③80万円のうちの80%の64万円を
④上位20軒の20%である4軒で手に入れている
ということとなります。
ということは、逆に見ると・・・
100万円-64万円=36万円を、100軒-4軒=96軒で分け合っている、ということとなります。
単純に1軒当たりの平均額を出すと、36万円÷96軒=3,750円です。
理論上の話ではありますが、この上位4軒に入らなければ、運営が成り立たないわけです。
そのためには・・・
「戦略」を徹底的に構築し、閾値(限界点)を超えるまで実践する。
ことに尽きますし、テクニックも含まれる「戦術」の部分は、この「戦略」が決まって初めて機能する戦術を考慮することができる、と言えます。
インターネット社会とお客さまの心理の変化
インターネットの普及で・・・何が変わったのだろう???
お客様の心理に3つの変化が・・・
インターネット社会とお客さまの心理の変化
現在では、多くの方がインターネットを利用して宿泊施設の予約を行うようになりましたし、宿泊施設の情報を収集するのにもインターネットが欠かせなくなっています。
その前~インターネットが普及する前~は、どのように予約をしたり情報収集したりしていたのでしょうか?
旅行会社(エージェント)に出向きパンフレットを入手する、旅行雑誌を入手し掲載情報や、電話を使って宿泊施設のパンフレットを手に入れる・・・という方法がメインだったと思います。
その旅行雑誌やパンフレットにもしも掲載されていなければ、候補にも挙がらない・・・ということになっていました。
ところが、今は好きな場所で好きな時間に、インターネットで情報を収集・比較することが簡単にできるようになりました。
その結果、何が起こったかというと・・・
①売り手(宿泊施設)と買い手(お客さま)の情報格差がなくなり、主導権が「買い手側」に移った
②お客さまが欲しモノやサービスを「勝手に調べて買う時代」になった
と言えます。
個人が勝手に情報を調べることが可能になった、ということは「あなたの宿泊施設の情報を、個人レベルにまで簡単に届けやすくなった」ということになります。
インターネットの普及により、資料であったり情報であったりを、お客さま1人1人に安く・簡単に届けることが可能となったわけですが、それらを有効活用することでさらに先に進める便利な時代になったと思います。
お客さまが必要とするであろう情報を、あらかじめいろいろな形で出しておけば、必要とするお客さまが勝手に情報を見て、問い合わせや予約をしてくれるようになったからです。
よって施設の規模にかかわらず、どんな宿泊施設でも平等に機会が開かれている、ということになります。
(「機会が開かれている」のであり、「活用するかしないか」は別問題です。)
情報の氾濫?
お客さまが簡単に情報を収集できるようになった、ということは、扱う(お客さまが手に入れることのできる)情報量が格段に増えたということになります。
いろいろな情報が手に入りやすい、ということは「自分にとって必要な情報はどれ?」を吟味する(取捨選択する)必要が生じることとなります。
よって、じっくり時間をかけて調査して、満足してから買うということとなりますのでそれだけ時間が必要になりますから「購買(宿泊施設では予約)までの時間が長くなっている」ことにより、予約が利用日近くになる、という現象が起こります。
「簡単に情報を収集できる=情報量が格段に増える」「取捨選択が必要」という状況を整理すると、インターネット社会となってお客さまの心理が次のようになっていると言えます。
①失敗したくない
②だまされたくない
③損したくない
さらに上記の3点を補足すると・・・
④読まない・聞かない
⑤信じない
⑥今すぐ行動しない
ということにもなってきます。
このお客さま心理を解消させられるような、お客さまが必要とする情報を、あらかじめいろいろな形で出しておけば、必要とするお客さまが勝手に情報を見て・・・ということになるのですね。
例えば、楽天トラベルやじゃらんネットに代表される「お客さまの口コミ」はこのお客さま心理を解消させる1つの情報提供をしている、ということになるわけです。
あなたの宿泊施設を調べやすくする、お客さまが購買(予約)に移る安心感を与えられる「量と質」の情報を提供することが必要なのですね。
0.5%の魔力「閾値」を越えるまで改善することの大切さ
継続して改善することの大切さ
毎日0.5%ずつ改善していくと、ある一定の時間経過とともに、成果が見えるようになってきます。
その一定の時間まで継続して改善を行うことの大切さをここでは書いています。
閾値とは?
「閾値」(しきいち・いきち)とは何でしょうか?
「閾値」とは、ある反応を起こさせるための最低の刺激量のことを指します。
転じて、
継続した努力を積み重ねることにより、ある日状況の変化する境目が やってくる、
その境目のことを指します。
右の「時間と成果の関連」の図をご覧いただけばおわかりいただけるとおり、一般的に「時間の経過に比例して成果が現れる」つまり直線でその関係が表わされる(右図の青い点線)と思われていますが、実は曲線で表されます。
ある一定の時間経過までは、ほとんど変化がなくなだらかな右上がりの状態ですが時間と成果の関係は複利計算ですので、「閾値」と言われる点を超えると変化が急な上昇カーブとなります。
(改善の質と量により閾値は変化します。)
この閾値までは、ほとんど変化が見られず、かといって成果は直線状に現れるはず・・・との想いとのギャップが生じ、「やっても変化がない」と諦めてしまう場合が多いと思います。
毎日継続して行うことが大切です。
それでも、30日ではまだ「何も変わっていないのでは?」と思ったりもします。
一般的に、90日から180日くらいで目に見える変化が生じてきます。
「何か最近変化してきたような・・・」感じになります。
そのまま継続していけば、2年後には・・・他を圧倒する「凄いこと」が事象として現れ、これが他には真似できないレベルにまでなっていくのですね。
もちろん、継続して行う行動の質と量によりこの数値は変化するわけですが、1日0.5%なら無理なくできると思いませんか?
ただし、この複利計算で注意しなければならないことがあります。
それは「1日でも手を抜く(休む)と、計算式が成り立たなくなる」ということです。
30日で1.1614なのですが、31日目に80%にしてしまうと、1.0を割ってしまいます。
非常に乱暴な言い方になるのかもしれませんが、うまく行くのか行かないのかの違いは「閾値を超えるまでやったかそうでないか」の違いだけである、とも言えるはずです。
逆も場合にも当てはまる
改善を継続する場合のことを書きましたが、その逆の場合にもこの「閾値」の考え方は当てはまります。
今現在、もしもうまく行っていないとしたのなら、うまく行かない努力を継続して行い閾値を超えたので好ましくない結果が事象として現れてきているわけです。
「何か変だな・・・」レベルならまだしも、「坂を転がるように・・・」という状況であれば、閾値を超えて凄い状態になっているわけですから、これをリカバリするのは容易ではないわけです。
この逆の事例が身近で、しかも世界レベルで現在事象として現れてしまっているわけです。
そう「地球温暖化」です。
地球のキャパシティー=閾値を超えてしまったがために、凄い事象の数々がアチコチで発生しています。
大きな話になってしまいますが、これも今までの積み重ねが起してきた事象と言えるはずです。
全くフラット(昨日と全く同じ今日、今日と全く同じ明日)の状態は、あり得ないはずで、そうすると「上」か「下」かにいつか閾値を超える日がやってくるわけです。
「上」に行くには相当の努力が必要であり、あそこは凄いな~と言わしめる宿泊施設は、それだけ努力を継続して行ってきているということになりませんでしょうか?
努力にも注意が必要
閾値を超えるための努力にも、注意が必要であると思います。
「プロ野球選手」を目指していたとして、「英語」を一生懸命勉強したとしてもおそらくプロ野球選手にはなれないと思います。
つまり、正しい方法で行うことが大切です。
そのためには、どの方向に行くのかを決め、そのためには何をするのかをシュミレーションしておくことが必要です。
宿泊施設の運営に当てはめれば、どこに行くのか=「どんな宿にしたいのか?」=「コンセプト」、何をするのか=どんな行動をするのか、また判断基準は?=「理念や改善・事業計画」、ということになります。
さらに定期的に検証を行うことで、現在地はどこで・・・なども把握し方向修正をする必要も生じてきます。
また、「継続して」「あきらめずに」「行動する」にはエネルギーが必要です。
「何のためにそれを行うのか?」を明確にしておかないと、モチベーションが続かないかもしれませんね。
「言語・聴覚・視覚」のバランスって?
コミュニケーションの法則~メラビアンの法則~
「視覚」「聴覚」「言語」で矛盾した情報が与えられたときに、人はどれを優先して受け止め、話者の感情や態度を判断するのか?という実験を1971年に行ったのがアメリカの心理学者アルバート・メラビアン。
効果的で意義のあるコミュニケーションをするためには、これら3つのメッセージ要素が、メッセージの意味を正しく伝えるように互いに支えあう必要がある、つまり3つの要素は一致する必要がある、という実験結果です。
しかし要素間に不一致・矛盾が発生した場合は、メッセージの受け手は異なる回路から異なる伝言を受け取り、異なる情報を与えられるため、不快な思いをすることとなる、というもの。(ウィキペディアから引用)
例えば、「何でもおっしゃってください」と言っている人が、「腕組みをして足を組んで、目線をそらして面白くなさそうな表情で」言っているとしたら、言っていることとボディランゲージが全く違うわけですから、聞き手はこの場合では「言っていることと態度が違うから、言っていることは信頼できない」という判断をする確率が高い、ということとなります。
リアルのコミュニケーションでもネットのコミュニケーションでも同じ
確実な実験結果はありませんが、リアルなコミュニケーションの場において言われているこのメラビアンの法則は、インターネットでも当てはまります。
「お客さまを大切にしています。」と言っている(書いている)宿泊施設があるとして、【情報が全く更新されていない】【お客さまからの問い合わせに返信しない】ということをしているとしたら、言っていることとその態度に矛盾が生じます。
矛盾が生じた場合は、言語(書かれている文字)よりも視覚(情報提供のあり方:この場合では感覚と言って方がよいかもしれません)情報のウェイトが高くなるわけですから、この部分で違和感を感じる=信頼感を損ねる、ということとなるわけです。
集客サイト
一番如実に表れるのが、じゃらんネットや楽天トラベルなどの集客サイト上。
人間は敏感なので、ちょっとした違和感を感じ取ることが容易にできてしまいます。
書いていることと、やっていること(あり方)については、常に一致しているのかどうかを検証する必要があるわけです。
お客さまとしては利用するなら少しでも寛げる宿泊施設に、と考えている人が多いはずですので、そんな些細な・・・と思うようなことまでも常に検証することが大切です。
つまり、書いている内容そのものよりも、お客さまに対するあり方が伝わっているということとなるわけですね。
決してテクニックではありませんが、注意しておくべき点は次のとおりです。
- 口コミ(お客さまの声)にはキチンと返信する
口コミ情報は、利用を検討している人に対しての情報提供の場。
同じ目線の消費者情報は一番信頼度が高いものです。
基本は、①24時間以内に返事を書く、②口語調で書く、③書き手の名前を入れる、ということです。
テクニックとして捉えて欲しくはないのですが、何かを伝えてくださる相手に対しての最低限のマナーのようなものです。
どんなことを書いているのか?ということよりも、どんなあり方で書いているのか?を見ているわけですね。
- 部屋出しはできる限り先まで
予約したいけど予約できない・・・ということはビジネスチャンスを失うばかりでなく、いらぬ不信感を与えてしまいます。
極端なことを言えば、来月予約したいのに、部屋が全く出ていなければ「潰れるのかな?」と心配になります。
先に先にと設定することで、余裕が生まれますし備えあれば憂いなしに少しは繋がりませんでしょうか?
- 定期的に情報を更新する
情報にも賞味期限がある訳で(例えば今5月なのに未だに4月のイベント情報しか掲載されていないとか)、賞味期限切れの情報は「いい加減な態度でしか接してくれないんだろうな」という、いらぬ誤解を招いてしまいます。
大体、細やかなところまでは気が回らないんだろうな・・・という解釈をされるお客さまが多いようです。
つまりは・・・
いろいろな場所にいくら素敵な文章を書いていたとしても、全体的なお客さまへの在り方が出ているのです。
隠そうとしてテクニックに走る方も中にはいますが、決して隠せるものではありません。
SEOがどうだ、予約成約率がどうだ、と言う前に、まずはお客さまに対するあり方の根本部分を改善することが大切です。
予約を獲得するためだけ(つまりは自施設の都合だけ優先)にいろいろなテクニックを知りたがる方がいますが、そんなことよりもあり方を磨く~つまりは人間性を磨く~ことの方がよほど重要です。
お客さまの「3つの定義」って?
どんな商売でも「お客さま」がいて初めて成り立ちます。
でも・・・「お客さま」の意味をはっきりとさせている人は少ないと思います。
「お客さま」という言葉を当たり前のように使っているにも関わらず、その「お客さま」の意味を知らない・・・という場合が多く見受けられます。
「別にそんなこと知らなくても商売はできる」とおっしゃられた方もたくさんいますが、なぜかあまりうまく行っていないことの方が多いですね。(余計なお世話ですが。)
ここでは、「お客さま」をこういうものだ、というように決めることはしていません。
それは、「各々で考えていただきたい」からですし、「絶対的な正解」というものはないからです。
よ~く考えていただく参考になればと思い、コラムを作りました。
3つの視点で「お客さま」について考察していきます。
①「お客さま」って何?・・・・・・意識の面から
②「お客さま」って誰?・・・・・・マーケティングで言う「ターゲット」の面から
③「お客さま」ってどんな人?・・・マーケティングで言う「ペルソナ」の面から
ちなみに・・・「お客さまは神様だ」とおっしゃられ、それが巷で有名な言葉となった元祖は「三波春夫氏」です。
三波春夫氏のオフィシャルサイトで「お客さまは神様だ」について記載がありますので一部を引用させていただきますが、サービスの受け手側・提供側とも、この三波春夫氏の想いを誤解して使用していることが多々ありますね。
三波春夫にとって、お客様とは聴衆、オーディエンスのことです。
客席にいらっしゃるお客様とステージに立つ演者、という場で生まれた言葉です。
ですから、商店にいらした買い物のお客様や飲食店のお客様のことではありません。
しばしば誤解される「金を払った客なんだから丁寧にしろ。言うこときけよ。お客様は神様だろ?」や「お客様は神様ですって言うからって、お客はなにしたって良いっていうんですか?」ということではないのです・・・・・
(三波春夫オフィシャルサイトから一部引用)
詳しくご覧になられたい方は・・・ 三波春夫オフィシャルサイト
「お客さま」って何だ?
「お客さま」って、一体全体何なのでしょうか?
かなり漠然としていますが、それぞれの宿泊施設にとって、この「お客さまって何?」の定義は違ってくると思います。(多分、ベースの部分では同じ方向性になるとは思いますが。)
この「お客さまって何?」を決めて、共有していないと何が起こるのかというと、「各々のスタッフの意識のずれ」が生じてきます。
ここでは意識のずれ加減を大げさに表現しますが、例えば・・・
「お客さまとは、お金を払ってくれた人のこと」と思っていると、「お金を払ってくれない(これから払ってくれるかもしれないが現段階では払ってくれていない)人」はお客さまではない、ということになります。
この場合、お客さまではない人に対する優先順位は自ずと低くなるかもしくは意識されないこととなるので、そのような行動になってしまいます。
もしも「お金を払ってくれた人もこれから払ってくれるかもしれない人もお客さま」という認識を持った人が「お客さまを大事にしろ!」と言った場合に、「お金を払ってくれた人がお客さま」と認識している人は「お金を払ってくれない人はお客さまでない」と思って行動するわけですから、その人に対して「どうしてお客さまを大事にしないんだ?」という意識を持つようになってしまいます。
定義付ははっきり言うと何でも構わないわけですが、その定義を全員で共有しておく必要があるわけですし、「うちの宿泊施設にとってのお客さまとは○○です」と言う時に、後ろめたさを感じないことが大切です。
少なくとも、「うちの宿泊施設にとってお客さまとは金づるである」とおっしゃる所に、喜んで行きたいとは思いませんから。
余計なお節介なのですが、松下幸之助氏は次のようにおっしゃられています。
誰のために、何のために熱心なのかによって、その熱心さが報われる
「自分」の「売上」のために熱心な人と、「お客さま」の「利益」のために熱心な人の違いですね、きっと。
「お客さま」って誰だ?
「お客さまって何?」についてよ~く考えて、腑に落ちて、ノートなどに書きましたか?
納得いくレベルになっていなければ、このコラムを読むのはちょっと早いかもしれません。
さて、続けては「お客さまって誰?」ということになりますが、これは「あなたの宿泊施設のお客さまって誰のこと?」をじっくりと考える必要があるということです。
マーケティングで言うところの「ターゲット」について考えることとなります。
どうして考えなければならないのかと言うと、大きく2つの理由があるからです。
①宿泊施設の商品・サービスの訴求効果を高める(つまり、売りやすくする)
②商品・サービスの品揃えに統一感を持たせ満足度を高める
以上です。
(細かくすると、もっと多岐に渡りますが。)
以前に、「お客さまって誰ですか?」と質問したところ(質問の仕方が悪かったのかも知れません。)「世界中の人」と答えられて、卒倒しそうになりました・・・
例えば、
ビジネスホテルの場合で言うと、「ビジネスで利用する人」とおっしゃられる方がいますが、それでは漠然としています。
ビジネスで利用する人は、さらに区分できるからです。
A.お金に糸目はつけないので、とにかくゆっくりと広いスペースで寛ぎたい
B.旅費の上限が決まっていて、その上限目一杯使って寛ぎたい
C.旅費は定額制で、できるだけ安く泊まってお昼代を浮かせたい
ちょっと考えてみたいただければ、もっと区分ができるかと思います。
AとBとCの方がビジネスホテルに求めるモノは違ってくるはずですし、Aの方に「うちのホテルはとにかく値段が安いんです!」とメッセージを投げかけても、応えてくださる確率は低くなろうかと思います。
(だからと言って、サービスレベルを低くしていい、ということにはなりませんので注意が必要です。)
「誰」を明確にすることで「戦術」を決めていくことができるようになるわけなのです。
「お客さま」ってどんな人だ?
「お客さまって誰?」は、比較的多くの方が決めています。
でも、ここで書いている「お客さまってどんな人?」まで考えている人は非常に少ないです。
「誰?」が決まったら、ではその「誰か」はどんなことに興味を持ったり、どんな考え方をしているのか?をリサーチする必要が生じてきます。
ターゲットを十分に理解することなく提供する商品・サービスは、自己満足で終わってしまう可能性が高くなってしまうからです。
ここで威力を発揮するのが「ペルソナ」と言われる手法です。
ペルソナとは・・・
直訳すると「仮面」ラテン語の「persona」が起源となっています。
(元々英語の「person」から来ています。)
マーケティングでは、このペルソナのことを、次のように定義します。
「架空の顧客のことであるが、プロフィール(名前・住所・年齢・趣味・ライフスタイルなど)を細かく設定した架空の顧客像」
まず最初に、注意しなければならない点からなのですが、
①机上で考えないこと
②ひとりで考えないこと
です。
続けて、ペルソナを設定することのメリットなのですが、次の5つが考えられます。
▼ユーザーを絞り込める
▼感情移入しやすい
▼共有しやすい
▼効率的になる
▼適切な決断がしやすい(判断基準が明確となる)
マーケティングのツールというよりは、思考ツールと言った方が適切なのかも知れません。
スタッフ全員で考え、決める作業そのものが物凄く楽しくて意義のあるモノになることは間違いありません。
このペルソナ設定の一番のメリットと言ってもいいのは、その過程において、
「顧客を深く理解しようとする」意識になることです。
ペルソナを設定するメンバーはもちろん、それを見る人にも、生き生きとした顧客のイメージが表現されているわけですから、
「お客さまを理解しようとする意欲を高めてくれる」思考ツールである、と言えるわけです。
ちなみに・・・
メールマガジン「宿力向上論」で1週間に1度くらい「伊井保輝物語」というフィクションの話を書かせていただいております。
この主人公が「伊井保輝」という男性なのですが、実はメールマガジンのペルソナ設定がこの伊井保輝になっており、次のようにペルソナを設定して書いています。
(直接的に参考にはなりませんが。)
コンセプト運営の「3つの疑問」?
コンセプト運営について
既にキチンとしたコンセプトがあれば、それに沿った改善活動を行っていけば良いのですが、ただ闇雲に「改善しよう」としても、どこへ向かっているのかが漠然とし過ぎています。
コンセプトは、あなたの宿泊施設の向かうべき方向性、ということとなります。
それは判断基準になり、迷った時・困った時に戻るべき原点とも言えます。
コンセプトとは、「基盤となる戦略」のことであり、この戦略が決まって初めてインターネットをどのように活用していくか?などの「戦術」を決めることができることとなります。
航海に例えてみると・・・
「とにかく海に出る」というのは、偶然どこかの港に到着するのかもしれませんが、目的地がない航海は高い確率で漂流となります。
ここでは、
①コンセプトとは何か?
②コンセプトはどうして必要なのか?
③コンセプトはどうやって決めるのか?
について簡単に書かせていただきます。
コンセプトって何だ?
「コンセプト」って、一体全体何なのでしょうか?
唐突ではありますが、「お金」が欲しいですか?
本当に「お金」が欲しいですか?
ほとんどの方は「お金そのもの」を額に入れて飾って、見て楽しむということではありませんよね?
そうすると、どうやら「お金」というものは何かを手に入れるための「手段」である、と言えるかと思います。
では今度は、お金を持つことで何を手に入れたいのか?ということになりますが、これは千差万別、十人十色になろうかと思います。
車や持ち家、旅行や美味しいモノを食べるなど、挙げ出したらキリがないかもしれません。
さらに、その車を持ったり家を買ったり旅行に行ったり美味しいモノを食べたりして、どんな状態になることを望んでいるのでしょうか?
ゆったりのんびりと寛ぎたい、ステイタスシンボルを手に入れることで認められたい・・・いろいろな欲しい状態が考えられます。
これらをまとめてみると、
①「Have」(所有)これを持てば・・・(お金)
②「Do」(行動)○○することができる・・・(車を買う)
③「Be」(状態)そして□□の状態を手に入れることができる・・・(ゆったり)
世間一般的な考え方は上記のような「Have」→「Do」→「Be」のプロセスです。
では、これを逆回転させるとどうなるのか?ということになりますが、
□□の状態を手に入れる→そのためには○○をする→そうすると最後にお金がついてくる。
「Be」→「Do」→「Have」の考え方です。
この「Be」の状態が「コンセプト」に当たります。
万一今はお金(売上)がなくても、「コンセプト」を明確にして、「コンセプト」の実現に向けて行動していれば、最後にお金(売上)が付いてくる・・・
という考え方がベースになっています。
多くの方が、この考え方をお伝えすると「アホか?」とおっしゃられますが、大真面目です。
コンセプトってどうして必要なの?
コンセプトは2つのことに例えられます。
まず1つは「航海」です。
「目的地」が定まっていれば、進路を取ることが可能となりますし、万一進路から外れたとしても修正が可能です。
しかし逆に、目的地が定まっていないまま航海に出たとしたのなら、偶然どこかの港に到着できるかもしれませんが風任せ・波任せ・運任せの「漂流」と同じこととなります。
ここでいう風や波は「外的環境」のことです。
つまり、「外」の要因に左右されることとなる、ということですね。
この「目的地」=「宿泊施設のあるべき姿」=「コンセプト」ということになります。
もう1つ「家作り」に例えることも可能です。
「設計図」がなければ、どんな家が建てたいのかわかりませんし、設計図なくして建築をする人はほとんどいないでしょう。
また「基礎工事」を疎かにすると、家が揺らぐこととなります。
設計図と基礎ができて初めて柱を立てて屋根を載せることが可能となるわけです。
ここで言う「柱」は改善行動のことを言い、「屋根」である売上は一番最後に載ることになるわけですね。
屋根だけの家は、住むのがおそらく大変だと思います。
「コンセプト」=「あるべき状態」を決め、「現状を把握」することにより「ギャップ」を認識することができます。
何が足りなくて、どうすればそのギャップを埋めることができるのか?ということです。
ギャップが明らかになると、そのための行動が初めて認識できるということとなります。
ギャップは、そのギャップを埋めるための行動のエネルギーとなります。
素直に・正直に現状を把握することが大切なんですね。
コンセプトってどうやって決めるの?
コンセプトの重要性はおわかりいただけましたでしょうか?
もう一度、コンセプトの決定から行動計画を作るまでの一連の流れを見ていきます。
どうやってコンセプトを決めるのか?なのですが、できる限り多くの運営に携わるスタッフで創り上げていきますし、お客さまにもご協力いただくこととなります。
エクササイズと呼ばれるゲーム形式で通常作っていただくのですが、半日はたっぷりかかります。
でも、想像力を発揮して楽しく皆さん作られます。
おおよその流れは次のとおりとなります。
①お客さまの声を集める
②理想の状態を知る
③現状認識を行う
④コンセプトを決定する
コンセプトは一文かつわかりやすい言葉で表現されます。
初めてお会いする方に、簡潔にあなたの宿泊施設を説明できるようにするためですし、念仏のように(?)あるべき状態を唱えられるようにするためです。
ここで「どうしてお客さまの声を集めなくてはならないのか?」とよく質問されますが、それは次の理由からです。
「ジョハリの窓」と呼ばれる、セルフイメージについての考え方がありますが、お客さまの声を集めることであなたの施設の特徴を認識していきます。
特徴には4種類あり、
①施設でも把握していて、お客さまにも伝わっている魅力(A)
②施設では気付いていないものの、お客さまには伝わっている魅力(B)
③施設では把握しているものの、お客さまには伝わっていない魅力(C)
④施設もお客さまも気付いていない新しい魅力(D)
です。
このうち、(A)から(C)の領域を確認していくために、外部からのフィードバック~お客さまの声~を集めるのです。
上の図の、青い円が「あなたが見ているあなたの宿泊施設」、赤い円が「お客さまが見ているあなたの宿泊施設」です。
一般的に、(A)の交差部分の面積が大きければ大きいほど、施設とお客さまの認識がマッチングし、総体的に顧客満足度が高くなるという傾向になります。
ちなみに、(D)の領域は現状から外へ出る「チャレンジング領域」となり、新しい魅力作りへの挑戦となります。
この作業を行っていく中で、1点だけ注意しなければならないことがあります。
右の絵は有名な「老婆と令嬢のだまし絵」です。
心理学で言う「ロックオン・ロックアウト」という心の働きがあるのですが、老婆に見える人は、後ろを振り返っている令嬢は見えない、令嬢に見える人は老婆が見えない、というある1つの視点にこだわりを持つと、他の視点を閉め出してしまう「心の盲点」を作ってしまいます。
「弱み」と思っているところが実は「強み」であったりするので、たくさんの視点で創り上げることをおすすめします。
他に、「SWOT分析」と呼ばれる手法を使ったりして、コンセプトを創り上げていきます。